以下がシナリオライターのポートフォリオになります!
台本作成や、ストーリー作成等お仕事お待ちしております!
題名
元天才プログラマーの俺が本気を出したら
【登場人物】
主人公(俺):本村康之(もとむら やすゆき)48歳男性。元天才プログラマーだが、昔とは違い今は窓際社員。無気力。
悪役(部長):佐々木剛(ささき たけし)主人公、新入社員の上司、気合と根性の38歳
新入社員(男性):堂島大翔(どうしま はると)新人だが、かつての主人公のようなずば抜けた能力がある25歳。 その能力の高さゆえ、悪役から嫉妬されている
社長:名前設定なし。悪役との応対や最終のシーンでの応対で登場。
【起】
・主人公がだらけている様子
・過去の事にも少し触れて伏線とする
・現状の会社の様子と新人登場
俺の名前は本村康之。しがないサラリーマンだ。前にいた会社を転職してから、約20年も経った。今年で50歳が目前の俺には、正直な所なんの情熱もない。例えば昇進するだとか、活躍するだとか、そういった事には無縁でいたい。面白くもない仕事を、特にこれといって感情を出さず、淡々とこなしていきたい。
人生を諦めてると言えばそうかも知れないが、これが俺が今まで会社員生活を長く続けてきた上で導きだした処世術だ。誰かを蹴落とすような昇進は俺には向かないし、かといって出来ないやつ扱いされすぎてもストレスだ。
『仕事はするけど、大事なことは本村さんには任せられない』みたいな温度感が、俺にはぴったりだ。それに別にサボっている訳じゃない。必要な事はしているハズだ。
俺は自分の席に座って、スマホを弄り始めた。そういえば、お気に入りのソーシャルゲームのアップデートがあったんだった。危うく仕事に集中して忘れる所だった。そして俺はゲームを起動させた。
ゲームに没頭していると
「本村さん。それ何してんですか?あ、モンヒト今日アプデっすもんね。てか聞いてくださいよ。俺昨日SSR引いたんすよ!」
俺のゲーム画面を覗き込んで話しかけてきたのは堂島大翔。うちの会社の期待の新人で、入社3年目にしてシステム開発部のエースを担っている。ちなみに学生の頃からコンペでは毎回優勝してきたそうだ。俺たちは所謂IT企業で、主な業務はシステム関連全般。その中でもシステム開発部は会社の中心的存在で、皆が憧れる部署だ。会社の実力者達が揃う部署で、ずば抜けた実力を持つ彼だが、俺とはゲーム仲間というフランクな一面も持っている。
「SSR?何当てたの?」
堂島は、ふふんと鼻を鳴らして
「ヤマタノオロチの真闇バージョンです」
「なんだって・・!超レアじゃないか・・」
俺は言葉を失う。なぜ天は彼に二物を与えたのだろうか。仕事ができてガチャの運もいい。
「もう一枚引けたらあげるっすよ」
「いやそれ、一生貰えなくないか?」
「あはは!いやマジでそーかもしんないっす!おっと、本村さん自分行かないとっす。また!」
そういって堂島君はご機嫌な様子で去っていった。
【承】悪役登場から誤納品問題発生
・悪役が新人をいびり倒す 悪役はここで新人に嫉妬している描写を記載
・部署全体がサービス残業させられている
・A社に送るものをB社に送信 AとBはライバル関係
俺には日課にしている事がある。それは社内の清掃だ。別に誰に言われた訳ではないが、清掃役を買って出てみた所、いつの間にか俺が清掃を担当する事となっているようだ。
本音を言えば、楽ができるという事が理由だ。仕事ができない奴という印象を与えつつ、みんなが嫌がる事を引き受けてくれていて一定の感謝の気持ちも得られる。俺にとってはコスパの良い作業という事だ。
廊下の清掃作業をしていると、システム開発部の前に差し掛かった時に怒鳴り声が聞こえてきた。最近システム開発部の部長が変わったと聞いているが、その頃から厳しくなったと評判が聞こえてきている。
「おい!堂島ぁ!お前何やってんだよ!」
「え?自分すか?佐々木部長」
「自分じゃねえだろ!一人称は『わたし』だ。何度言ったら分かるんだよこの野郎」
「あ、すみません・・。え、で、なんかしました?」
「お前がやった資料よ。いい加減に日本語ちゃんと使えるようにしろよ。」
「あ、すんません。ちょっと日本語苦手で・・」
「何言ってんだよ!お前何人だ?日本語できなかったら日本人じゃねえだろ、外人かてめえは。じゃあ何語だったらできんだよ」
「プログラミング言語なら!」
堂島君はそう言って笑った。空気が読めてないのか分からないが、最近の若者はこんな感じなのか?俺は別に嫌いではないが、仕事をするうえでは差し支える事もあるだろう。
「お前舐めてんのか?日本語できなかったらどういうコードを書くか分かんねえだろうが!ふざけんなよ!」
「あ、そういう意味じゃなくて・・すみません」
なんとも噛み合わない会話だ。俺は年代的には佐々木部長と近いので、何となく言わんとしてる事は分かるのだが、あれでは下の世代には伝わらないだろう。
「お前新聞とか読むのか?」
「新聞っすか?え、なんでですか?」
「新聞を読んで文章を勉強してこいよ。こんな文章じゃ誰にも伝わらないって何度言ったら分かるんだよ」
「今っすか?」
「んな訳ねえだろ!!自分で休みでも何でも使って少しは勉強しろよ!!」
佐々木部長はイライラを堂島君へぶつけている。イライラする理由は、ジェネレーションギャップだけではない。
「ったくよ。先月業績がトップだったからって調子に乗るなよ!お前くらい若くて体力もあるんだったら当たり前だからな!」
堂島君のプログラミングのスキルは正直群を抜いている。速さも正確さも、正直うちの会社には惜しいレベルの人材だ。何でも、家から近いからという理由でうちを選んだようだが、能力だけで言えば更に上を目指すような才能だろう。
「調子に乗ってないっす。別に普通っす」
成績には興味が無いのか、堂島君は素っ気ない様子だ。その様子が更に佐々木部長を苛立たせている。
「じゃあ資料の文章くらいちゃんとしろよ!今すぐやり直せ!」
堂島君が纏めた資料を机に叩きつけて呼びつけている。
「すいません・・あ、いたっ」
急いで取りに行った堂島君が資料を取るついでに、佐々木部長は堂島君の腹を殴りつけた。
「早くしろよ。ったく最近の若いやつはよ」
「すんません・・いてて・・」
堂島君は席に戻っていった。佐々木部長はイライラが収まらないのか
「お前ら作業遅れてんだからな!分かってんのか?今日帰れると思うなよ!」
部署内に響き渡る声で怒鳴り散らかしている。俺は心底この部署じゃなくてよかったと思いながら、システム開発部の前の廊下を通り過ぎたのだった。
その後俺の耳に入ってきたのは、信じがたい情報だった。何と、堂島君がA社へ納品するはずのデータを、誤ってB社に送信してしまったというのだ。A社とB社はたがいにライバル関係にあり、このデータはA社が社外に漏れると致命的な重要データだ。しかもそれが敵会社であるB社に送信されたとあれば、重大な問題だ。会社内には不穏な空気が流れ始めていた。
【転1】新人がクビの危機、主人公が本気を見せる
・悪役が新人のせいにする
・会社を去ろうとする新人を食事に誘う 酒を飲みながら反撃を決意
ここで新人と主人公の過去を重ねる
「堂島お前、ついにやったな。俺はお前がいつかやらかすんじゃないかと思っていたよ」
佐々木部長は満足気にニコニコしている。会社や部署の危機だというのにだ。俺はそれを見て違和感を覚えていた。
「自分じゃないっすよ!俺B社に送信なんてしてないですから!」
「ああ?じゃあこの送信元は誰のIDだよ。お前以外いないだろ?」
送信元を確認すると、確かに堂島君のIDから送信されたもので間違いない。ただ本人は否定している。
「送ってないもんは送ってないっすもん。なんかのエラーとか、間違いとかの可能性あるっすよ」
「うるさい!言い訳をするな。ったくよ、社長に謝りに行かなきゃいけねぇだろ。お前もこいよ」
そういって堂島君を連れて、佐々木部長は社長室へと向かった。
「恐れ入ります、佐々木です。今回の誤送信騒動につきまして報告にあがりました」
「入りたまえ」
「失礼致します」
社長室のドアを開き、佐々木部長、堂島君が入室する。社長室の中は今回の件を受けて張り詰めた空気だ。
「まず今回の件、誠に申し訳ありませんでした。3年目の堂島が、本来A社に納品しなければいけない所、誤ってB社に納品してしまっていました。しかも今回A社とB社が対立関係にある会社であった為、最悪の場合A社からの損害賠償請求も想定されます。現在B社への問い合わせを行っており、データの回収を行おうとしている所ですが、盆休みの期間中の為連絡が取れない状況です。早急な対応を進めている最中でございます」
「社長!自分は送信なんてしてないんです!マジで。絶対自分じゃないと思うんです!」
「黙っていろ!お前自分のミスを認めないつもりか?どんな育ちしてんだ?」
「佐々木くん、何か証拠でもあるのかね?」
「ええ、こちらをご確認ください」
佐々木部長は持っていた資料を社長に手渡す。送信先が堂島君になっている先ほどのメールに関する資料だ。
「確かに。堂島君が送信している。堂島君、これは君じゃないのかね?」
「送信したアドレスは確かに自分なんですけど、送った覚えはないんです。間違って送ったとかもたぶん無いんですよ」
「それでは無実を証明することはできないな。しかしその追及ももちろん重要だが、まずはA社への謝罪とB社に対しての連絡が必要だ。今は両社とも休みだと思うが、明けには漏れなく対応が必要だ。その上でだ、B社に誤って送ってしまったデータは何なんだ?」
「A社の顧客リストとその分析ツール。及びA社の顧客に対する対応履歴です」
「なんだって?じゃあ個人情報流出じゃないか。その上、企業秘密の漏洩まで。送り間違えましたでむないようではないぞ?就業規則の懲戒項目にある重大な過失に該当するレベルだ」
「その分析ツールを作ったのは確かに自分ですし、その際に顧客リストや対応履歴データも触りましたけど。まだ直さなきゃいけない所もあったんで、絶対送ってないです」
「堂島!言い訳をするな!じゃあ逆にお前以外の誰が送信できるっていうんだ!自分のアカウントで、かつ開発していたのはお前だろう!」
「堂島君。認めるのか?実際はどうなんだ?」
「本当に、自分じゃないっす・・」
「埒が明かないな。証拠がある以上、堂島君を放置する事はできない。状況にはよるが、規則に照らし合わせれば君には今後勤務して貰う事はできない。明日から自宅待機していなさい。またこちらから連絡をする」
「そんな・・!」
「まあ、黙って処分を待つんだな堂島。お前がやらかした事を、自分で責任を取るだけの事だ」
佐々木部長と堂島君が社長室を後にした後、俺が堂島君を見つけたのは、定時過ぎの時間だった。
酷く疲れた顔で、ふらふらと退社しようとしていたので、俺は彼を呼び止めた。
「ずいぶん疲れた顔をしているな堂島君。どうした?」
「ああ、なんか自分、明日から自宅待機っぽいんです。社長から、勤務させる事はできないって言われちゃって」
「もしかして、例の件か?」
「そうです。例の件っす。いやもう、俺どうしたらいいんですかね」
「そうか・・。じゃあ堂島君、今日ちょっと付き合わないか?」
俺はそういって、グラスを傾ける仕草をした。
「ああ・・そうすね・・。本村さんに話聞いてもらいたいかもしれないっす」
「そうかそうか。じゃあ俺も片付けてくるよ、少し待っていてくれ」
そうして俺と堂島君は居酒屋に入って、今回の件を堂島君から詳しく聞いた。
「なるほどな。で、実際に堂島君はやってないんだろう?」
「マジっす。絶対自分が送信したとか無いっす」
「じゃあ、そうなんだろう。堂島君は嘘をついたりしないからな」
「ほんとっすか?ありがとうございます」
俺はビールを煽りながら、自分の中で考えを巡らせていた。
(でもなぁ・・ここで首を突っ込んでも、俺にできることは・・まあ、無くはないんだが)
「でも、自宅待機って事は、たぶんクビって事っすよね。どうしたらいいのか・・」
(将来ある若者を見捨てて、のうのうと過ごす事が良い事なのか?それが俺の望む人生なのか?)
「あれ、本村さん?どうしたんすか?」
(こうやって、今後も若者を見捨てていくのか?しょうもない俺の過去を引きづって、このまま人生が終わりでいいのか?)
「え、マジどうしたんですか?そんな怖い顔して」
「え!?なんか言った堂島君!?」
「うおびっくりした。急にフリーズするからどうしたのかと思いましたよ。自分の打ったコードが間違ったかと思いました」
プログラミングジョークを飛ばしてくる。本当は自分が傷ついて辛いだろうに、急に神妙になった俺との空気を和ませようと冗談まで言える。こんな若者を見捨てる事は、やっぱり俺にはできない。
(いい加減、覚悟を決めるか。もう一度、戦う事にしよう)
「もう、大丈夫だよ堂島君」
「え?何がすか?」
「堂島君は誤送信なんかしてない」
「いや、確かにそうですけど・・え?」
「君の無実を俺が証明する。まあ、任せておけ」
普段のらりくらりと仕事をしている俺が、急に真剣になった様子を見て、堂島君は少し驚いた様子だ。
「ありがとうございます。でも、無理しなくて大丈夫っすよ。自分はほら、元気なんで」
そういって笑顔を見せてくる。やはり、ここは男を見せる所だ。将来有望な若者を見捨てる事はできない。
「辛い時は、誰かを頼ってもいいんだ」
俺は一言だけ、そう伝えた。真剣に言っている事が伝わったのか。
「ありがとうございます。自分、本村さんに話聞いてもらってよかったっす」
そのあとは他愛ない話をして、お開きとなった。堂島君を居酒屋の前で見送った後、俺は長く息を吐いて。
「さて、少し忙しくなるぞ」
真剣な顔で前を見つめた。
【転2】新人を救う主人公及び、悪役を成敗する主人公
・悪役の成敗は3点
1.送信処理へハッキングして、実際の送信は悪役が実施していた事、担当者を書き換えた事
2.防犯カメラへのハッキングで新人へのパワハラを確認
3.勤怠システムへハッキングし、防犯カメラ画像と合わせて無賃労働強制
この3点で詰める
最後はB社への誤送信のデータごと削除して決着。
「おや?本村さんずいぶん早いんじゃないか?掃除に熱心だな」
佐々木部長が既に出勤している俺を見つけて声をかけてくる。
「いやいや。ちょっと用事があってね。佐々木部長のトコは大変だったそうじゃないですか」
「まあね。ボンクラが部下にいると大変だよ。仕事を進めるどころか足を引っ張られるだけ。いない方がマシってやつだ。まあ今回で居なくなるだろうから、全然いいんだけどね」
「ああ、ちょっとその件で話があるんですよ。一緒に社長室にいいですか?」
「社長室に?なんで?」
「まあまあ。ちょっと立ち話もなんですから。社長には先にアポ取ってあるので」
佐々木部長は不審に思いながら、俺についてきた。社長室の前で一声かけ、社長室に入る。
「社長、お時間頂きありがとうございます。本村でございます。昨日の件について、追加報告がございます」
「早速話してくれ。何の話だ?」
「それでは3点。説明させて頂きます。まず一つ目は、佐々木部長による送信元の書き換えです」
「なんだと!?俺は書き換えなんてしていない!」
「どういう事かね、本村くん」
「怪しいなと思って、今回の件について。ちょっと今日早く来て、送信履歴の確認をしたら全く同じ内容を佐々木部長が送ってるみたいなんですね。そして、それが上手い事・・まあ、上手くは無いんですが。佐々木部長の名前から、堂島君の名前に書き換えられていたんです」
「本当かね?佐々木部長」
「そんな訳がないでしょう。言いがかりをつけないで欲しい。それに本村さん、あんたがそんな事分かる訳ないだろ。老害のあんたが、社内システムにアクセスする権限なんか持っている訳ないじゃないか」
佐々木部長は余裕の笑みを見せている。自分の書き換えがばれないとタカをくくっているのだろうが、今回ばかりは相手が悪い。俺は書き換えの履歴が記載された証拠の資料を、社長に手渡した。
「これは書き換えの記録です。社長、ご確認をお願いします」
「これは・・確かに、佐々木くんが書き換えを行った記録だ」
「なんだと?!社長、私もよろしいですか」
佐々木部長は俺が提示した証拠を確認している。最初は余裕の表情だったが、徐々に青ざめていった。
「佐々木部長は自分がやった事を隠したつもりだろうが、社内のシステムに入る事くらい簡単にできる。『消した履歴』は残るが、あんたの場合はそれすらもイマイチで、自分の名前がシステムに残っている事すら確認できていなかった。単純に名前を置き換えただけの素人作業だな」
「こ、こんなもの捏造だ!俺を陥れようとしているに違いない!」
「佐々木くん、それを渡しなさい。・・ああ、私だ。少し頼まれごとをいいかな。今から資料を取りに来てくれ。それが正しい事なのか確認してくれないか。ああ、今すぐだ。頼む」
社長は佐々木部長より紙を受け取りながら、電話をかけている。すぐにシステムを保守する部署の連中が数人で押しかけてきて、社長より調査の命令を下されていた。
「これで捏造か、本物かが確認できる。佐々木くん、少し待つといい」
「は、はぁ・・。も、もちろん捏造に決まってるじゃないですか!ははは!社長も気にしすぎですよ!」
「笑っていられるのも今のうちだ。社長、次はこれです」
俺は持っていたパソコンを開き、ある動画を表示する。その動画には、佐々木部長が堂島君の腹を殴りつける様子が映っていた。
「これは・・殴っている方が佐々木くんで、殴られている方は・・誰かな?」
「これは3年目の堂島です。日頃から仕事にかこつけて、暴力を振るわれていたようです」
「暴力だと!?これは指導だろうが!お前みたいになまっちょろい奴には分からないだろうが、こんなもん普通だろ。俺だって部活の先輩に殴られて育ったんだ。それすらも受け入れられない奴が社会で通用すると思うな!」
「学生じゃないんだから。俺らはいい大人だぜ?暴力はダメだ」
「なんだと?本村さん、あんたが俺に意見するのか?お前何様だよ」
「何様でも何でもない。当たり前の事を当たり前に言っているだけだ」
「いや、待て。そもそも、なぜあんたが防犯カメラの画像を持っている?警備室に言って見せて貰う事くらいはできるかも知れないがデータの持ち出しなんてできないはずだ。それだけじゃない、さっきの書き換えの件でも、データにアクセスしているような事を言っていたな。そんな事できるわけないだろ」
俺はニヤリと笑って、佐々木部長へ返した。
「そんなもの、簡単に突破できるに決まってるだろ。俺を誰だと思っている?」
その時、社長に指示を受けていた社員が戻ってきた。
「社長。全て本当でした。書き換えは事実です」
「そうか。佐々木くん、君が犯人か。新入社員に罪を擦り付けて貶めるとは何事だ」
「くっ、でもこれは、堂島があまりにできないやつだから仕方ない事だったんです。だれかが堂島を追い出さないと、いずれ社内に悪い影響を与えます」
「社内に悪い影響を与えているのはあんただよ、佐々木部長。それに、佐々木部長。あんたサービス残業も強制しているな。打刻のデータと、みんなが残っている時間が全然違うじゃないか。これも確認させて貰ったよ」
「さ、サービス残業って・・。そんな事当然だろ?俺だって残ってやっているし、俺が若い頃は当然だった。それすらもできないのか?最近の連中は」
「いや、佐々木くん。今はそれでは通用しない。許されない事だ。」
「しゃ、社長・・」
「佐々木くんの件は分かった。こちらで預かろう。後日処罰を言い渡す。・・だが、本来の問題が片付いていない。誤送信の件。頭の痛い問題だな」
社長は頭を抱えて、苦々しい視線を佐々木部長へ送っている。
「それだったら、もう訂正したんで大丈夫ですよ」
「「え?」」
社長と佐々木部長が声を合わせて驚いた声をあげる。
「今相手方も休みじゃないですか。相手側のメールアドレスから、ちょっとログインさせて貰いましてね。受信履歴を削除しておきました。ついでにA社宛に正しく送っておきましたんで、何の問題もないと思いますよ」
「本村くん、君は一体・・」
「いやあ、転職前にいた会社での知識ですよ。プログラミング関連の事なら、俺に分からない事はありませんよ。こういったハッカーの真似事みたいな事も、簡単なものなら問題なくできます。それこそ、セキュリティのプロが相手だったりすれば、少し骨が折れる作業でしょうが、まあ大丈夫かと思います」
「そんな事を隠していたのか・・本村ぁ」
佐々木部長が憎しみがこもった視線を俺に向けてくる。俺はそれを真正面から受け止めて。
「堂島くんがあまりにかわいそうでね。本気を出させて貰った。俺も昔は堂島くんみたいに、エースと呼ばれる存在だったんだ。でも、俺のやり方が気に食わなかった連中にハメられて、会社を追い出される事になってね。そのあと、うちの会社で拾って貰ったって訳だ」
「そんな過去を隠していたのか・・」
「別に隠してた訳じゃないが、大きすぎる力は全体のバランスを崩す。でも、当時の俺もね。誰か助けてくれてたら、もっと頑張れたんじゃないかって。そう思ったら、今回の堂島くんを見捨てる事ができなかったんだ」
俺は拳を握りなおして
「一生懸命やってる人が、報われる世界であるべきだ。俺はもう逃げない」
真剣な顔で佐々木部長をにらみ返す。俺の迫力におじけづいたのか、若干後ずさりしている。
「なるほど。では先ほど伝えた通り、佐々木部長には後ほど処分を言い渡す。まず自宅待機を命ずる。代わりに、堂島君は明日から出勤させるように」
「しゃ、社長・・」
「黙れ。お前のせいで会社が潰れる所だったんだぞ!クビだけで済むと思うなよ!」
「ひい!!ど、どうかお許し下さい!申し訳ありませんでしたあ!!」
「今すぐ私の前から去れ!今すぐだ!」
佐々木部長は社長の迫力に押され、逃げ出すように社長室を後にした。社長室には俺と社長が残されている。しばしの沈黙の後、社長が口を開いた。
「本村くん」
「はい」
俺は今回の件を解決した事で、褒められる事を期待して笑顔を向けた。
「今まで、サボってたんだね」
バレた。やばい。冷や汗が背中を伝う。
「え、あ、いやぁ・・私なりの全力というか・・」
「君にも、後日処分を言い渡す」
「そんなぁ!」
あまりに理不尽だ。人助けをしたのに。
【結】後日談(500文字程度)
・悪役が退職
・主人公と新人が決意を新たに仕事に挑む
佐々木部長は、後日正式に懲戒解雇となった。懲戒解雇は一般的に退職金も発生しない、非常に重い処分だ。社長は更に、暴行罪を適用して徹底的に詰めようとしていたが、堂島くんが処分の取り下げを願い出た為、そこまでには至らなかった。
そして、俺の処分だ。俺は社長の命令でシステム開発部の部長を仰せつかった。その能力を買われて・・と言えば聞こえがいいのだが、目の届く所で監視して働かせようという所だろう。まあ、望む所といえば望む所だ。そんな事を考えていると、堂島くんの声が聞こえた。
「あ!本村さん・・いや、本村部長おはようございます!今回の件マジでありがとうございました!」
「部長ってのも、なんか、なぁ」
俺は恥ずかしくて頬をかいた。でも部長になんかならなくたって、俺の決意は変わらない。
「いやいや!マジですげぇっすよ。自分もプログラミング自信あるっすけど、本村さんはやべえ。マジでリスペクトっすよ」
「ま、乗りかかった船ってやつだ。もうちょい頑張ってみようか。ついてくる?堂島くん。俺の仕事はSSRレベルどころじゃないぜ?」
「はい!宜しくお願いします!俺もSSR以上になるっす!」
こんな若者がいる限り、これからの時代も安心していられる。それに、まだまだ俺にも役割があるようだ。